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ミスを減らす取組み ~秘書スキルの測定~

 人は同じミスを繰り返す。歴史を少し学んでいると、この言葉を何度も感じる時があります。戦争を繰り返し、災害を10年もすると忘れて対策よりも利便性を求め再び被害にあうことなどです。
 秘書も人間ですからミスをすることがあります。ただし、秘書業務は経営と直結していますので、ミスが役員や会社の信用を損ねることにつながるため、絶対にしてはいけないケースが多い厳しい職場です。

 私はミスには2つあると考えてきました。1つは相手が気づくレベルのもの。もう1つはこちら側は気がついているが相手には気づかれないで済んだもの。どちらもミスですが、前者は絶対に避けなければなりません。
 私も秘書管理職2年目にひどいミスをしました。全国の支店長を集めた研修をグループ会社の施設で行った時の懇親会で、社長から事前に「乾杯の発声を、半年後に定年になる長崎支店長にするように」と言われ、司会のため早めに会場に入った私は、一番先に会場に来て座っていた年配の方にお名前をお聞きしたところ、長崎支店長のXXと答えられたので乾杯をしていただきました。しかし、スピーチの内容が何となく当社とまったく違うことを言うので、乾杯後に確認したところ、グループの別の会社の長崎支店長だったのです。彼は懇親会場を間違えていたのでした。その日参加していた支店長は40名くらいおり、2年目の私はまだ数人しか顔を知っていなかったとはいえひどい話です。後ほど、社長からは面白いものを見せてもらったと言われましたが・・・。

 ミスを減らすにはどうすればよいか。先日、秘書管理職の集まりで秘書の評価を話し合った際に、ある会社ではミスの重要さを段階的に分けて秘書別に集計し、評価項目としているとの報告がありました。評価対象とすることでミスを減らす意識を高める狙いなのでしょうが、秘書の成長につながる策ではないと思います。
 私が行っていた対策は、秘書別にミスを起こす可能性を測定し減らす方法です。測定により秘書スキル評価の一部ともしますが、ミスを無くすための指導にも役立てます。

 方法は2つ。1つは、半期に2回それぞれ別の時期に、重めの業務と軽めの業務のチェックシートを作ってもらうことです。秘書別に担当業務が違いますから、ある秘書は重めの業務として役員ランチ会の段取りであり、軽めの業務としては担当役員の2泊以上の国内出張の段取りなどです。これをチェックシートにして出してもらいました。
 チェックシートというものは、作る人によりかなりの違いがあります。自分だけが分るように作る人、項目ごとの重さと軽さや優先度を書き分けられていない人、注釈ばかり多い人や逆に項目内に何でも書き込む人など。
 ミスが少ない秘書のチェックシートは、重軽や優先度などが明確に記載され、誰が使ってもその業務ができるようになっており、しかも見た目も整っていて美しいのです。一方、ミスがやや多い秘書のチェックシートは、粗い記載で分かりづらく、抜けも多かったりします。チェックシートの作成は本人のためにもなりますし、良いものは他の秘書も活用でき、秘書勉強会の資料としても使えます。そして私の指導機会と評価にも。
 
 ミスを起こす可能性を測定する2つ目の方法は、秘書のメモを確認することです。
私が同席していた時に秘書が担当役員からいくつか指示があった2日後あたりに、その時のメモを見せてもらいます。指示の直後ではメモの追記や手直しなどをしていないので、それを行ったであろう2日後あたりに見せてもらうのです。
 メモでは、私も同席していたので、役員からの指示の書き漏れや勘違いなども確認できますし、秘書が書いた重点マークや補足、気づきや対応アイデアの追記も見ることができます。
 メモもチェックシートと同じように、ミスの少ない人とやや多い人の記載は明確に分かれます。 記載は個性だというかもしれませんが、メモもチェックシートも秘書業務ですし、役員からの指示なので重要な経営活動の記録です。秘書のメモは、代表訴訟や刑事事件などでは一次資料(発生時の記録)として重要な証拠となることもあり、担当役員を救う可能性もあります。
 秘書データベースへの登録や、IT化されたチェックシートを使う会社も多いでしょうが、入力する時に何は書き、何は書かず、どのように表現するか、漏れはないか、分かりやすいかという点は、秘書により異なります。

 私が評価やミス発生の指標としたのは、メモやチェックシート以外も色々ありましたが、メモは毎日行う秘書の基本ですので、秘書の成長がよく分かります。採用した中途社員や派遣さんのスキル、新人が数年で一人前に変わっていく姿などが分かります。

 人は同じミスを繰り返す。そのミスを減らすための具体的な取組みが大切です。 と偉そうにいうと、前述のようなひどいミスをした私がどの口で言っているのかとご指摘されると言葉がありません。


このコラムの執筆者

及川 学

一般社団法人日本秘書協会 ・元常任理事 ・秘書管理職委員会総括責任者 ・認定講師「経営サポート力講座」「秘書基礎講座」「実践危機管理セミナー」 「新任秘書管理職講座」「秘書のための経営知識」などを担当

■職歴
東証2部IT企業で秘書課長、経営企画部長などを経て 上席理事企画推進本部副本部長、コーポレート本部副本部長、 イノベーションセンター長(本部長)関西支店長(本部長) などを歴任。
退職後、 一般社団法人信書便事業者協会事務局長、一般社団法人日本セルフストレージ協会事務局長を勤める。

■現在
今年3月で40年のビジネスマンを卒業。
本業の傍ら27年間の講師活動も、健康メンテナンスのため例年の40回を今年は3分の1に。
25年前に立てた30個の人生目標の残り2つのうちの1つである、東京と故郷(岩手)の二重生活を4月から着手。

■資格 
中小企業診断士 BCAO認定事業継続初級管理者(国内BCP資格)

■著作
『秘書室長実践マネジメントマニュアル』代表著者(アーバンプロデュース社) 『よくわかる経営知識』 (日本秘書協会)

■講師歴 
経済産業省、総務省、日本秘書協会、 日本IBM、税理法人トーマツ、新日本石油、ボストンコンサルティング、セブンイレブンジャパン、日立製作所、イオン、ブリヂストン、他

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