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「秘書業務におけるAI活用とは」

 ChatGPTなどの生成AIの登場により、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。先日もOpenAI社が人の声を再現できる音声生成AIモデルを発表したり、EUでは世界初の包括的なAI規制法案が成立したりと、AIに関するニュースを目にしない日はほとんどありません。AI技術の進化と活用速度に対して、法律を含めたルールや規制がまだ追いついていないのが現状ですが、欧州AI法案の内容は、欧州で活動する日本の企業などにも適用され得るもので、AI活用に対するルール整備も今後急速に進められていくのではないでしょうか。 

 様々な課題はあるものの、AIの活用は著しく進んでおり、すでに私たちの生活に深く浸透しつつあることを日々感じます。例えば、オンラインショッピングではAIが過去の購買履歴や検索クエリを分析し、最適な商品を提案してくれます。また、ストリーミングサービスではAIが事前に設定した好みを基に、映画を個別にカスタマイズしてくれるなど、日常の中で当たり前に使われ始めています。

 先日目にした、とあるECサイトの動画配信で、24時間AIが作り出したインフルエンサーがリアルタイムで出演し、視聴者のニーズを分析しながら瞬時に必要なものを提案してくれるというものがありました。このインフルエンサーは、人間にそっくりでありながら、24時間不眠不休で働き、大量のデータをフル活用する優秀なスタッフです。このように、これまで人間が行ってきた多くのことを、生成AIで代用できるようになり、秘書をはじめとしたバックオフィスの業務はAIに代用されていく代表的な例ともいわれています。

 バックオフィスのAI活用について具体的な検討がなされ、すでにAIを取り入れて業務効率化を図っている企業もあるかと思います。すぐに取り入れやすいものとして、ミーティングの文字おこしや議事録、挨拶状やスピーチ原稿などの文章作成、英文翻訳など多くのものがあります。それ以外にも、蓄積されたデータを活用したチャットボットでのQ&A対応や、自動タスク管理など多岐にわたり活用が進んでいます。

 しかし、デジタル推進やAI活用を重要施策として掲げている企業が多くある一方で、導入すべきシステムやサービスが分からないなどといった理由から、なかなか業務に取り入れるまでに至っていないとの声も耳にします。皆さんが感じているように、すでにAIは日常に取り入れられ、デジタル推進やAI活用が欠かせないものとなっていくなか、今後は活用方法がわからない、AIに仕事を取られるという思考は捨て、AIを使いこなすという選択が求められます。そして、秘書に限らず、これから生きていくすべての人にとってAIをどのように活用していくのかということは大きなテーマのひとつになるのではないでしょうか。

 もちろん、誤った情報の精査や情報漏洩、著作権の問題など、リスクを理解した上で使われていくことが前提ですが、AIを活用できる人とそうでない人の差は、今後さらに明確な差となって現れてくることでしょう。

 私が新人だったころ、先輩に「すべての知識を得ることは難しいが、必要な情報を知っている人を知っていることが大切」と教えられました。自分の知識が足りなくてもその方法を知っている人を把握しておけば、問題解決につながるということです。まさにAIはそのサポーターにもなってくれます。秘書もAIリテラシーを向上させ、今後さらに進化するAIをどのように活用するかを考え、AIにできることはAIに任せて効率的に処理することで、空いた時間に創造的な思考を必要とするその先の業務に取り組むことができます。また、AIが苦手な感情や人間関係の構築などの人間的な要素を強化することで、かえって秘書としての強みを際立たせることができます。 AIを恐れず積極的に活用し、お互いの強み・弱みを理解したうえで、AIとコンビを組み、ボスを支える「最強のチーム」として、共にサポートしていくのはいかがでしょうか。

このコラムの執筆者

藤田 久美子

コムチュア株式会社
経営企画本部 秘書室長

東証一部大手建設会社、食品メーカーなど、20年間秘書として従事。現職では未上場からJASDAQ、東証二部、一部の市場転換を経験し、2019年4月より秘書室長。一般社団法人日本秘書協会では、2015年より全国秘書会議実行委員、月例会委員のメンバーとして活動。2021年よりセミナー委員サポーター担当。

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