秘書の仕事を考えるOliveブログ
「そのお店、どう選んでいる?」秘書のリアルな会食セッティング事情
ビジネスにおける会食は、単なる食事の場にとどまりません。重要な商談の成功、お客様との関係構築、役員の慰労など、その目的は多岐にわたります。そのため、会食の成功を左右するレストラン選定は、秘書にとって重要な役割の一つです。数あるお店の中から、どのようにして最適な一軒を選び出すのでしょうか?多くの秘書が重視する条件、そして近年変化しつつある選定ポイントとは?
2024年と2025年の秘書向けアンケート結果を比較しながら会食セッティングの選び方やエピソードまで紹介します。
秘書が重視するレストラン選びの条件

秘書が会食レストランを選定する際に、どのような条件を重視しているのかを、2024年と2025年のアンケート結果を比較しながら紹介します。
「個室の有無」
2024年の回答は23.5%、2025年の回答は21.2%と2.3%減少していますが、両年とも会食レストラン選定において最も重視されるのは「個室の有無」でした。2025年の失敗談では「個室という話だったが実際はパーテーションのような仕切りだった」という声があったように、単に個室があるだけでなく、その質(完全個室か、防音性など)まで重視されているのが実情です。 会食では重役たちのプライベートな会話や機密性の高いビジネスの話をするわけですから、単純に仕切られていれば良いという話ではなく、完全個室が不可欠です。
「お店の場所」
2024年の回答は19.5%でしたが、2025年の回答は17.3%とこちらも2.2%減少していますが、取引先のアクセスや移動の利便性を考慮した「お店の場所」も引き続き重要という結果が出ました。立地についてはお店が駅から近いだけでなく、車で行きやすい場所であるかなども重視されるため、お店の場所とその周辺事情も考慮して適切に選ぶ必要があります。
「金額」
会食の予算に合わせた「金額」も、常に考慮される基本条件として挙げられています。 2024年の回答は11.9%でしたが、2025年の回答は15.4%と3.5%伸びており、重要性が高まる傾向にあります。厳しい予算金額ですと選ぶのも一苦労しますが大切なポイントとなるため、この予算ならここ、など目安となるお店情報をストックしておくと良いでしょう。
「料理カテゴリー(和・洋・中など)」
会食の目的や相手の好みに合わせて料理の種類を選ぶことが一般的です。料理カテゴリー(和・洋・中など)については、2024年の回答は19.0%、2025年の回答は19.2%とほぼ同じでした。 また、料理カテゴリーによっては雰囲気が変わるだけでなく、席の配置やテーブルの形状が変わったりもしますので事前にどんな雰囲気が良いのかも情報収集をしておくと安心です。
「お酒の種類」
2025年のデータでは、食事だけでなく「お酒の種類」が重視されているという声も挙がっています。最近は多種多様な飲み方が広がっているため、どのような種類が必要かを事前に把握し手配できると安心です。また、特に取引先が酒類メーカーであったり、系列に関係が深い会社であったりする場合は、お酒の銘柄も含めて選定する必要があるので注意しましょう。
「取引先の好き嫌い、アレルギー有無」
相手の好みや健康への配慮は、秘書にとって非常に重要なポイントです。アレルギーだけでなく「嫌いなもの」「苦手なもの」を事前に把握し、避けましょう。また宗教によって口にしてはいけない食材もあるため、調理法も含めて確認しておくことが重要になります。2025年のアンケートでは「グルテンフリーとムスリムのゲスト」をお迎えするといった非常に難易度の高い依頼に対応したというエピソードも寄せられており、多様な食のニーズへの対応力が求められていることがわかります。
ここまでアンケート結果から見る秘書が重視するレストラン選びの条件をお伝えしてきました。
アンケート結果から「個室の有無」「お店の場所」「料理カテゴリー」については引き続き重要度は高い傾向ということがわかりました。また、2024年度と比較すると、2025年は「金額」「お酒の種類」「お店の話題性」が特に増加していました。「お店の話題性」については例えば「年初にトップ懇親でなだ万を予約したところ、初競りでオノデラ社が落札したマグロが提供されており喜ばれた。」というエピソードがありました。他にも2025年のコメントからは、「お店の雰囲気やサービスの安定」「個室とレストランのお化粧室(おトイレ)との動線」「支払い時の請求書対応」といった細やかな配慮やスムーズな進行へのこだわりも重視されています。
リアルな失敗談
ここからは、秘書の方々から寄せられた具体的な失敗談を紹介します。失敗談から学ぶことは多いです。ぜひお店選びをする際の参考にしてみてください。
「個室」に関する失敗
「個室でなくていいといわれ、まあいいかと思い、個室を改装中だったお寿司屋さんを予約したら、後日、あれは個室がよかった、と言われてしまいました。ご本人が個室でなくていいと指示したことは忘れていますし、やはり自分の判断で、念のため個室のお店を手配するべきだったと反省しました」
相手の言葉通りに受け止めるだけでなく、その会食の意義や重要性、参加者の顔ぶれなどを念頭に本当にその席で良いのか確認することが望ましいです。
「お店の環境」に関する失敗
「通り道に歓楽街の類のお店があったと後日聞かされた」
「料理は抜群に美味しい、立地も最高なのに、会話が聞こえないほどにうるさいお店。これは実際の時間に来店して確認しなければ分からないことだったので、個室がないお店は雑音等も確認すべきであったと反省」
といった声がありました。今はインターネット上で知りたい情報が手に入る時代ではありますが、秘書として知りたい情報が網羅されているところばかりではないため、入念に確認が必要です。 特に、お店の雰囲気はお店自体だけではなく、周辺環境や騒音レベルまで関わってくるため必ず確認をしましょう。可能であれば下見を行うことがベストです。
「サービス」に関する失敗
「ビールがまずい(洗浄がされていないと思われる)」
「シャンパンがぬるかった等、飲み物やお食事の温度管理がずさんなところ」
「大切な会食で会員制の施設や高級なレストランを利用しますが、テーブル担当の方がアルバイトや経験が浅い方が当たるとサービスの質も下がります。飲食店の人手不足を感じます」
などが挙げられました。当然ながらお店の雰囲気や料理の味だけでなく、ドリンクの質や接客の質が会食全体の満足度を大きく左右します。 可能であれば口コミや事前の確認でサービスレベルを見極めることや、当日は大切なお客様の接待であることなどを伝え、サービスの質の重要性についてお店側に伝えておくことも重要です。
「時間管理」に関する失敗
「接待で人気店を予約したが、お店が2回転制でゆっくりできず、時間で区切られ店を追い出された」
という声がありました。予約前に時間制限や、会食の目的に合う時間設定が可能かを確認しましょう。終了時間が来たらすぐに追い出されるお店もあるため、細かく確認しておくことが大切です。
「アクセス」に関する失敗
「雑居ビルに入っていたので、ご案内やお見送り、車寄せなどで苦労したお店があった」
この失敗談が示す通り、お店の入り口の分かりやすさや、車寄せの有無、エレベーターの広さなど、アクセスに関する細かな点も考慮が必要です。また、バリアフリーであるかも大事な確認事項となるため、例えば車椅子での入店が必要な場合にそれが可能かなども確認しておきましょう。
ここまでカテゴリーごとの失敗談を紹介しました。どれも事前に確認することで会食の満足度がとても変わります。 次の章では、失敗談を活かした予約時のチェックポイントを紹介します。
予約時のチェックポイント
ここからは、レストラン予約時のチェックポイントを見ていきましょう。 レストラン予約時は、以下の項目を確認してみてください。
部屋の確認
会食の場において、部屋の質は非常に重要なポイントとなります。
特に「完全個室」「喫煙・禁煙」「防音性」については、事前に必ず確認を行いましょう。
それぞれ、具体的に紹介します。
完全個室かどうか
「個室」と記載があっても、実際には隣席と仕切りのみの半個室であることもあります。落ち着いて会話ができる環境を確保するためには、「完全個室」を選ぶことがおすすめです。
喫煙・禁煙の確認
お相手の嗜好や健康面への配慮も考慮し、喫煙可・禁煙のどちらが適切かを選択しましょう。特に禁煙を希望される方がいらっしゃる場合は、全席禁煙の店舗を選ぶと安心です。迷う場合は、禁煙席で喫煙スペースが別に設けられているお店を選ぶことをおすすめです。 同じフロアに喫煙スペースがあると移動もしやすいです。
防音性の確認
壁が薄く隣室の声が聞こえてしまうと、会話に集中しづらく、話の内容が漏れてしまうこともあります。重要な話題を扱う場合は、防音性の高い部屋を選ぶようにしましょう。口コミや写真、可能であれば現地確認でのチェックがおすすめです。
メニューの確認
料理やドリンクの事前確認も会食の満足度に大きく関わります。
「アレルギーや苦手食材への対応可否」「お酒の種類」「お酒を飲まれない方向けの対応」など、細部まで確認することが重要です。
アレルギーや苦手食材への対応
参加者に事前にアレルギーや苦手な食材がないかを確認するのはもちろんのこと、お店側で対応可能かどうかも確認しましょう。
アレルギー対応ができない店舗もあるため、代替メニューや食材の差し替えが可能かどうか、詳細まで聞いておくと安心です。 なお、アレルギー対応の方のメニューが極端に異なると、他の方と比べられてしまうケースもありますので、なるべく自然な差し替えができると理想的です。
お酒の種類
お店で提供されるお酒の種類も、事前に確認しておきましょう。相手の好みに合わせて、ワインや日本酒など幅広く揃えているかを確認してみてください。また、高価なお酒が注文された場合、数万円単位で予算オーバーになる可能性があります。あらかじめ価格帯を把握し、必要に応じて予算の上限をお店に伝えておくことも大切です。
お酒を飲まれない方への対応
会食では、お酒を飲まれない方への配慮も欠かせません。ソフトドリンクの種類が豊富か、ノンアルコールワインやノンアルコールビールなど代替となる飲み物があるかを確認しておくと、誰もが気兼ねなく会食を楽しめます。 「飲める人」と「飲まない または 飲めない人」の双方に心地よい時間を過ごしてもらうためにも、飲み物の選択肢をしっかり整えることが秘書の大切な役割です。
お店の雰囲気・周辺環境の確認
お店の雰囲気や周辺環境については可能な限り口コミサイトからの情報収集やGoogleストリートビュー等の活用、下見等をしましょう。「高級感」とひとくちに言っても、その印象や好みは人によって様々なため直接確認できることがベストです。 また、周辺環境も同時に確認することが大切です。電車や自動車が近くを通る、大きな音を出す施設が隣にある、など、確認をしなければ気づかない点もあります。
サービス体制の確認
接客やサービス体制の丁寧さも会食の印象を大きく左右します。スタッフの対応力や気配り力によって会食がスムーズに運ぶかどうか決まります。お店によっては個室に専門スタッフがついてくれる場合もあります。専任スタッフがいると飲み物のオーダーや料理の出し方など細やかな対応が可能です。可能であれば、過去の利用者の口コミや、事前に問い合わせた際の対応で判断することがおすすめです。
予約方法と時間制限の確認
人気店の予約の取り方(予約開始時間、予約方法)や、会食の時間制限の有無なども事前に確認しましょう。特に会食の時間制限については、落ち着いて時間を過ごすことができない場合もあるため確認事項としてとても重要です。 単に開始時間と終了時間を確認するだけでなく、食事・飲み物それぞれのラストオーダー時間の確認や席にいて良い時間まで確認できると良いでしょう。
支払い方法の確認
「お支払い時に請求書支払いの対応ができるか」「いつものクレジットカードのブランドが使えるか」といった、法人対応が可能かどうかの確認も、事後の経費処理を進める上で重要です。 事前に確認して、スムーズな対応ができるようにしましょう。
その他、細かな配慮
お店の待機スペースや早めに到着した場合の対応、足腰の悪い方に対しての配慮が必要な場合の対応についても確認しておくことが、不測の事態を防ぐヒントとなります。 ここまでレストラン選びのチェックポイントを紹介しました。
ぜひ先人たちの失敗談を参考にして、事前のチェックポイントの確認を徹底し、満足してもらえるようなお店を選びましょう。
本当は教えたくない!とっておきのお店
アンケートで寄せられた「教えたくないけどいい店」の具体的なお店をご紹介します。秘書たちが「ここぞ」という時に選ぶ、信頼と実績のあるお店です。
今回は東京、京都、大阪エリアの5店を紹介します。
東京
小熊
「こちらにお客様をお連れすると必ずお店のファンになります。個室あり」
と声がありました。銀座にあるお店で、個室もあり安心で、お客様の満足度も高いお店です。
銀座 すえむね
「アラカルトでメニューを選ぶことができ、接待対応も完璧。会食のコース疲れしている役員の方に喜ばれます。」
と、柔軟な対応と接客対応をしていただけるお店です。
ピーター・ルーガー・ステーキハウス東京
「お肉好きの方に。脂の強い和牛でなく赤身肉なので、年齢層の高い方にも喜ばれます」
と、幅広い年代に喜ばれるステーキハウスです。
京都
翠雲苑
「祇園の花街の中にあり、風情のある建物の中で、すべて個室。中華ですが、味付けはしつこくなくて、価格も手ごろ。」
と、雰囲気、プライベート性、味、価格のバランスが取れた名店です。
大阪
翠 大屋
「大きな窓から大阪中心部を流れる大川が見え、料理も非常に美味しく、夏の終わりに伺った際は、お店の入り口と、カウンター奥に鈴虫を飼い、涼やかな鳴り声がBGMになっていて感激しました。」
と、景色、味、そして季節感あふれる演出で、特別な体験を提供しているお店です。
まとめ|選定力で会食を成功させよう
秘書にとって、レストラン選定は単なる予約業務ではありません。それは、会食の目的、参加者、そして役員の意図を深く理解し、最高の「おもてなし」を形にするための重要な業務です。
今回のアンケート結果からも明らかになったように、「個室の有無」や「場所」「金額」といった基本的な条件はもちろんのこと、相手の「好き嫌いやアレルギー」、さらには「お店の話題性」や「サービスの質」といった細部にまで気を配ることが、会食成功の鍵を握ります。時に、予約の困難さや予期せぬトラブルが発生することもあるかもしれません。
しかし、リアルな失敗談から学び、事前確認の徹底や、お店との良好な関係構築に努めることで、失敗を回避できる可能性が高まります。 日頃から情報収集をおこない、事前確認を徹底し、喜んでもらえるお店を選びましょう。
Olive編集局
「秘書の仕事を考えるOliveブログ」編集局です。このブログでは、日本秘書協会様によるゲスト寄稿や、秘書業務のハウツーやOliveの便利な使い方コンテンツをお届けします。みなさまの、いまの秘書業務の改善やこれからの秘書業務のあり方に、なんらか参考になれば幸いです。