秘書の仕事を考えるOliveブログ
「変化に強い秘書になるために」
ビジネスのスピードが加速し、かつてないほど変化の激しい時代を迎えた今、秘書に求められるスキルも確実に変化しています。かつての秘書は、スケジュール管理や来客対応、資料作成といった定型業務を丁寧かつ正確にこなすことが求められ、言葉遣いや立ち居振る舞いなどのビジネスマナーもプロフェッショナルな要素として重要視されてきました。しかし現在では、これらに加えて「柔軟性」と、業務の質とスピードを高めるための「デジタル対応力」が、上司からの信頼を築くうえで欠かせない要素となっています。
「柔軟性」とは、状況の変化に臨機応変に対応する力ですが、現代のビジネス環境においては、「変化を前向きにとらえ、自ら判断して動ける力」も合わせて求められます。予期せぬ状況に冷静に対処し、「今、何を優先すべきか」「どう動くのが最善か」を判断できる力が必要です。例えば、在宅勤務中だった上司が急遽出社することになり、予定していたオンライン対応を対面形式に切り替えなければならなくなることがあります。あるいは、関係者に共有した資料の修正が必要となり、迅速に再配布する必要が生じる場合もあるでしょう。このような場面では、臨機応変かつスピーディな対応が求められます。そのために重要なのが、「選択肢を持つ」という意識です。あらかじめ複数の対応策を考えておくことで、状況に応じた最適な判断が可能になります。
そして、こうした柔軟な対応を実現するうえで、近年特に注目されているのが「デジタル対応力」です。デジタルツールを活用することで、情報の収集や共有、対応のスピードが格段に向上します。例えば、出張直前に旅程が変更になった際、オンラインで複数の交通・宿泊手段をすぐに確認できる仕組みがあれば、短時間で新たな案を提示することが可能です。例えば、複数の部署や関係者との会議日程を調整する場合には、メールや電話で個別に確認するよりも、オンラインのスケジュール共有サービスやグループウェアを活用するほうがはるかに効率的です。また、資料をクラウド上で共有しておけば、会議の前後でのやり取りもスムーズに行えます。急な修正が必要になっても、リアルタイムで同時に更新できるため、参加者全員が最新の資料をすぐに確認できるのです。
こうした「小さな仕組み化」の積み重ねが、上司や関係者からの信頼につながっていきます。「この人に任せておけば安心だ」と思ってもらえる存在になるためには、柔軟な対応力と、デジタルツールを効率的・効果的に使いこなす力を組み合わせることが有効です。また、コロナ禍以降は業務のペーパーレス化が更に進み、社内申請や稟議、承認などもオンラインで完結するのが当たり前の時代になりました。このような変化に対し、「やり方が変わってやりづらい」と感じてしまうのではなく、「どう活用すれば自分の業務がもっと効率的になるか」と前向きに捉える姿勢が、まさに柔軟性の本質と言えるでしょう。
秘書として長く働いていると、つい「自分の担当範囲」を限定して考えてしまいがちですが、働き方が多様化する今だからこそ、担当外の業務にも積極的に目を向けていくことも大切です。部署を越えた調整や新しい仕組みを取り入れるなど、自ら役割を広げていくことで、より高い信頼を得ることができます。 私がかつて仕えていた上司は、「生き残るのは最も強い者ではなく、変化に適応できる者だ」というダーウィンの進化論の一節をよく口にしていました。この言葉は今なお私の仕事観の礎となっており、変化のスピードが加速する現代において、その重みを改めて実感しています。常に柔軟な思考を持ち、デジタルツールを効果的に使いこなしながら、自らをアップデートし続けることこそが、これからのビジネスパーソンに求められる姿勢ではないでしょうか。
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藤田 久美子
コムチュア株式会社
コーポレート本部 社長付秘書役 兼 広報ユニット長
東証一部上場の大手建設会社や食品メーカーなどで20年以上にわたり役員秘書を経験。現職では未上場からJASDAQ、東証二部、一部の市場転換を経験し、秘書室長や広報室長に従事。一般社団法人日本秘書協会では、月例会委員、セミナー委員を担当し、2015年から全国秘書会議実行委員を務める。