秘書の仕事を考えるOliveブログ
役員目線のコロナ禍における秘書サポート
ここ2か月の間に、昔から親しくしている何人かの社長や役員と会って、コロナ禍になってからの秘書サポートについて話を聞きました。今回のコラムは役員サイドからの話を書きます。
最近は対面も増えているものの、役員または秘書が在宅することも多く、打合せもお互いマスク着用なので、笑顔を見せあえていないとこぼす役員もいました。
オンラインの会議や面談が常態化したことで、役員が喜んでいる例としては、会議時に参加者全員の顔や表情がよく見えることだそうです。コロナ前は、大きな会議室では後ろに座った若手社員の顔や、円卓で横並びした社員の顔はよく見えませんでした。しかし、オンライン画面ではみんな平等です。若手も指名しやすくなりました。
また、参加人数によって会議室を調整する手間が減ったため、会議がタイムリーに開催でき、会議や面談の開催依頼を秘書にしやすくなりました。
オンライン会議中に、秘書からチャットで連絡やネタをもらうこともできてとても便利になり、昔のように渡されたメモを見るための中断もありません。会議の最中に、役員が関連資料に言及し探そうとしていると、秘書が用意してフォルダーに登録しましたとチャットで連絡がきて、すぐに説明ができて助かったという例もありました。
ただし、会議や面談中に秘書がオンラインに入室し続けるのは稀なので、会議中にチャットで秘書と連絡を取り合ってサポートしてもらうのに慣れてくると、秘書が退室していて反応がないと少し不便と感じる時もあるようです。これもコロナでのIT活用が進んだ結果でしょう。
ある社長は、秘書のITサポートが高いおかげで、社員向けのオンライン経営説明会ががらりと変わったと、秘書を高く評価していました。この会社の説明会では、社長の説明の冒頭に画面にQRコードを表示し、それを社員に読み込んでもらったあと、画面に社員が社長から聞きたいと思われるテーマを10個前後表示し、投票してもらいます。社長は40分くらい事前用意の説明を行った後、後半の20分は投票の上位から説明をするようにしたことで、一方的になりがちな社長プレゼンを、社員のタイムリーな要望に対応する形でできているとのことです。 また、随時チャットで社員からの質問を受け付け、秘書が重要と思われる質問を選んで社長に連絡をしてくれて、その場でいくつか答えることを行っており、後日、その日受けた残りの質問にできるだけ多く答えるビデオを撮影して、社員にそのアドレスを公開し、いつでも見られるようにしているそうです。
このサポートも、最初は情報システム部門が協力していましたが、3回目からは秘書室だけで運営をするようになりました。上述した秘書のITサポート例は、少し高度であり、どの会社でも求められるものではないのですが、秘書のサポート力が、役員と社員とのコミュニケーションを促進する新しい形です。
しかし、役員目線ではコロナ禍で残念なこともあるようです。対面でも在宅でも、秘書との接点が短時間となったため、用事を頼みづらくなっていることや、珈琲も共有スペースのポットから自分で入れるので味気ないと感じるそうです。
お茶を持ってきてもらう時にする秘書との雑談は、仕事の合間の癒しと感じることもあり、それ以上に現場の情報を秘書から得るメリットもあります。
役員の多くは、秘書を社内外の情報を教えてくれる貴重なスタッフと考えています。現場の部長や管理部門の管理職に聞きにくいことも、秘書なら聞けることがあるからです。多忙な業務で時間が足りない役員の、目や耳の代わりとなって経済関連だけでなく、世の中で流行っていることや注目されていることを雑談の形でお話しすることは、秘書が思っているよりも求められていることがあるのです。
とはいえ、秘書自身も在宅、交替勤務などで周囲とのコミュニケーション機会が減り、情報が入りにくくなっています。ソーシャルディスタンスにより隣の秘書とも2メートルくらい離れた席になっていると、隣が何をやっているかもわからないので、話しかけにくくなっています。
コミュニケーション不足、情報不足を秘書のコロナ禍での問題と捉え、対策を行っている秘書室が増えています。例えば週に1~2回、20分程度のオンライン秘書雑談会を実施し、何でもよいから一人2~3分話をしてもらうことや、その内の数分はトピックスを会社の他の事業部から説明してもらう取組みを行っている会社があります。手土産の試食会を実施するケースやオンラインでのランチミーティングやアフタヌーンティーなどの例もあります。
社長や役員にも不得手があり、やりたくても時間の都合でできないことがあります。SNSやプレゼン画面作成が苦手な人もいますし、色々な分野の雑誌や新聞に目を通して情報を集める時間が足りないという人もいます。それらを補うサポートを秘書がやるようになると、コロナ禍で少なくなった役員と接する時間を、サポート内容でカバーできます。量を質に替える対応がWith & Afterコロナで求められる秘書の一つの姿かもしれません。
及川 学
一般社団法人日本秘書協会
・元常任理事
・秘書管理職委員会総括責任者
・認定講師「経営サポート力講座」「秘書基礎講座」「実践危機管理セミナー」
「新任秘書管理職講座」「秘書のための経営知識」などを担当
■現住所 千葉市
■年齢 62歳
■職歴大興電子通信株式会社(東証2部)
営業課長、秘書課長、経営企画部長、営業推進統括部長などを経て
上席理事企画推進本部副本部長、コーポレート本部副本部長、
イノベーションセンター長(本部長)関西支店長(本部長)
などを歴任。2016年9月退職後、
KSGグループ秘書役兼IT統括室長
兼一般社団法人信書便事業者協会事務局長を経て現職
■現職 一般社団法人日本セルフストレージ協会事務局長
■資格 中小企業診断士
BCAO認定事業継続初級管理者(国内BCP資格)
■公職等日本経営システム学会 正会員
秘書フォーラム発起メンバー
CBS(国際秘書)検定 元試験委員(経営・法律)
■著作 『秘書室長実践マネジメントマニュアル』代表著者(アーバンプロデュース社)
『よくわかる経営知識』 (日本秘書協会)
■講師歴経済産業省、総務省、岩手県、商工会議所、日本秘書協会、
日本IBM、税理法人トーマツ、ヤマハ発動機、新日本石油、シスメックス、
ボストンコンサルティング、セブンイレブンジャパン、日立製作所、豊田通商、
イオン、ブリヂストン、他