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偶然から始まったキャリアが、“準備”になっていた― 秘書としての歩みとこれから

 

前回の及川学さんのブログ「秘書、そのあとのキャリア」を拝読し、秘書のキャリアは「意思・スキル・準備」によって形づくられるという言葉が、改めて心に響きました。

私自身のキャリアを振り返ると、決して計画的に歩んできたものではありません。営業職としてキャリアをスタートした後、経営企画を経験し、「秘書不在」という状況の中で、ある日突然、秘書という役割を担うことになりました。準備が整っていたわけではなく、「私で大丈夫だろうか」という不安の中でのスタートでしたが、先輩方の所作や仕事の進め方を思い出し、真似ることから一歩ずつ積み重ねてきました。

秘書の初期は、正確さやスピードといった基本動作を徹底することで精一杯でした。その後、社長秘書を務めることになり、経営や事業への理解を深め、社内外の関係者との信頼関係を築くことの重要性を学びました。さらに管理職の立場になると、視点は「自分」から「組織」へと移り、秘書同士の連携や育成、仕組みづくりに向き合うようになりました。また、秘書のキャリアや評価のあり方、スキルの標準化といった、より構造的な課題にも取り組んできました。

一方で、「このまま秘書を続けてよいのか」と迷いを感じた時期もあります。しかし、その葛藤があったからこそ、自分の専門性や強み、そして秘書という仕事の価値を改めて見つめ直すことができました。振り返れば、目の前の役割に向き合い続けてきた経験の一つひとつが、結果として次のステップへの準備となっていたのだと感じています。

こうした個人の経験は、現在のNECにおける秘書改革と重なる部分があります。NECでは、従来の部門ごとに分散していた秘書を専門組織として集約し、チームで幹部を支える体制へと転換しました。これにより、これまで属人化しがちだった知見の共有や人材育成が進み、秘書の専門性を組織として高める取り組みが加速しています。

また、秘書の役割そのものも大きく変化しています。単なるスケジュール調整にとどまらず、業務の優先順位を見極め、「会議は本当に必要か」「どの形が最適か」といった提案を行い、幹部のパフォーマンスを最大化する存在としての役割がより重要になっています。 さらに、コンピテンシーの明文化やローテーションなどにより、多様な経験を通じて成長できる仕組みが整備され、秘書としてのキャリアを自律的に描けるようになってきました。

加えて、AIをはじめとするテクノロジーの進化は、秘書業務の効率化を大きく後押ししています。しかし、本質的に求められる価値は変わりません。それは、相手の立場に立ち、先を読み、最適な行動を考える力です。私自身が大切にしてきた「想像力」と「誠実さ」は、むしろこれからの時代において一層重要になると考えています。

これからの秘書には、環境の変化に適応するだけでなく、自ら学び、選び、行動するキャリア自律が求められます。偶然に見える経験も、振り返ればすべて意味のある準備であったように、自分の歩みをどう捉え、どう活かすかが未来を形づくります。私自身もまだ道半ばではありますが、この仕事の価値を次の世代につなげていきたいと思います。

== 長年にわたり秘書という仕事の本質を示してくださった及川さんに感謝申し上げるとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

  


兼ねてより弊社Olive事業に対し多大なるご尽力をいただきました、
元 一般社団法人日本秘書協会 常任理事 及川学様が、5月19日に逝去されました。
ここに生前のご功績を偲び、格別のご厚誼に深く感謝いたしますとともに、

故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
            株式会社シーエーシー Olive事業担当者 一同


このコラムの執筆者

日垣 映里子

日本電気株式会社(NEC)秘書室長

OA機器メーカーにて法人営業を担当後、電機メーカーの社内カンパニーで経営企画に従事。カンパニー長秘書の立ち居振る舞いを直に見て、秘書の心得を学ぶ。その後、新規事業会社設立に参画。教育事業会社の秘書室にて社長直轄PJ事務局を経て17年間で3名の代表取締役社長の秘書を担当。秘書管理職として「グループ秘書会」を立ち上げ、秘書の課題解決やスキルアップを推進。
2024年11月から日本電気株式会社(NEC)にて秘書室マネージャー、2026年4月から現職。

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